東大をはじめとする超難関大学の入試では、数学が合否を大きく左右します。数学は他の教科よりも「ある一線を超える」ことが難しく、またハイレベルな受験生であっても、問題によって出来・不出来のバラツキが大きくなるからです。そこでこのブログでは、これら難関大の入試問題をできるだけ細かく解くことで、超えられない「ある一線」がどこにあるのか(恐らく人それぞれ違うと思います)、その目安として読んで頂ければと思います。

2008年7月18日金曜日

平成19年の東大理系数学 第一問を解いてみました。(問題自体はリンク先を参照下さい) この問は、
 「AならばBであることを示せ」
という典型的な証明問題です。証明問題の場合、方針としては
  • そのまま解く → 「AならばB」を示す
  • 対偶を取る → 「BでないならばAではない」を示す
の2通りが取れることになります。どちらを使うかはケースバイケースですが、基本的には「A」「B」を表現するのと、「Bではない」「Aではない」を表現するのとどっちが簡単かで決まるかと思います。今回の問題では、整数を表現するのは簡単ですが、整数ではない数(有理数、無理数の集合から整数だけきれいに除外したもの)を表現するのは難しいことから、「そのまま解く」パターンを使うのが簡単そうです。

さて、それでは「A」と「B」を数学的な表現に直し、これらを結び付けなければなりません。P(x)がn次以上の整式と書いてあるので、これを一般表現で表すと

という感じになりますかね。で、これにをかけた結果として出た数式をと同じように
と表すとして、が全部整数ならば、も全部整数であることを言えばいいわけです。
そこまで分かれば、をガリガリ展開してと整数かなんかで表現できればOK、となるわけですが、そううまくいかないのが東大入試問題の難しさ。この式、展開するのが超絶面倒なんです。(試験時間内にできるのか??) まずを多項式に展開してみますが、これは2項定理を使ってとなります。これとの多項式を掛け算しようとすると・・・うぉ、となる訳です。

で、どうすればいいかなんですが、の表現法はこれ以上変えようが無いので、を別方法で表現することを考えます。どう表現するかですが、をかけたものと無理やり見ることができます。当たり前ですね。更に、このを掛けたもので・・・と延々考えていくと思い当たるのが、そう、数学的帰納法です。が正の整数ってところもポイントですね。から順番に全て成立することを証明すれば、を表現したことになります。
で、の場合は

となることから、=整数となります。の時に成立するとしたら、この時の式

をまたと見なせば、と全く同じように計算できます。

正しい解答例は過去問集などで探してください。この数学的帰納法を思いつくかどうかがポイントですが、これは多くの問題を解いて慣れるしかないですね。「が正の整数」と書いてある時点で数学的帰納法が解答ツールの1つとして思い浮かぶまでになれば十分かと思います。