ミッシング・リンク

東大をはじめとする超難関大学の入試では、数学が合否を大きく左右します。数学は他の教科よりも「ある一線を超える」ことが難しく、またハイレベルな受験生であっても、問題によって出来・不出来のバラツキが大きくなるからです。そこでこのブログでは、これら難関大の入試問題をできるだけ細かく解くことで、超えられない「ある一線」がどこにあるのか(恐らく人それぞれ違うと思います)、その目安として読んで頂ければと思います。

2008年8月21日木曜日

今回は東大入試平成18年前期の問2にしました。東大の確率問題の中でも、これは比較的簡単な問題のようです。

では(1)から。具体的な値に対して確率を求めてみろ、という問題です。こういった問題は、力に任せて全部書いてみるのが吉。という訳で早速書き出してみると、3パターンしか見つからない・・・。
(a) ×○○
(b) ××○○
(c) ×○×○
という訳で、これらの生起確率を求めればOK。問題文を更に噛み砕くと、
○○ もしくは ×× → p
×○ もしくは ○× → (1-p)
ということが分かるので、(a)(b)(c)の生起確率はそれぞれ
(a) (1-p)p
(b) p(1-p)p
(c) (1-p)(1-p)(1-p)
となり、これらを足し合わせたのがP2となります。

(2)では、それの一般系を解くことになります。確率問題、起こりうるパターンの簡単な法則を見つける部分は全て日本語で考え、そのパターンの生起確率を求める時に初めて数式を使う、というのが簡単に解くコツです。さて、今回求めるPnの発生パターンを日本語で考えると、「最初が×、それ以降に○がn個あるパターン。2つ目の×は最後以外のどこかに挟まっていてもいいし、無くてもよい」
ということになります。結構シンプルですね。図で書くとこんな感じです。
(a) ×○○○・・・・○ → ×の後、nこの○が連続
(b) ×○・・・○×○・・・○ →最後以外のどこかに×が挟まる
あとはこれらの確率を計算するだけです。(a)は、最初の×○が(1-p)、以降は○がn-1個続くので、
生起確率はで求まります。次は(b)のパターンです。×がどこに挟まるかでn通りのパターンがあります。それぞれの確率も一緒に求めると
(b-1) ××○○○○・・・○ →
(b-2) ×○×○○○・・・○ →
(b-3) ×○○×○○・・・○ →
(b-4) ×○○○×○・・・○ →
中略
(b-n) ×○○○○・・・×○ →
こんな感じになります。これらを足し合わせたものがPnになります。(b-2)~(b-n)のn-1個の式は計算の順序を入換えると、実は同じ式になります。
これらを踏まえると、最終的な確率は
 
という感じになります。

前提条件さえ理解できれば、特に難しくない問題だったかと思います。このように日本語が多い確率問題は、できる限り日本語で考えてしまい、最後の最後で数式に直すのがポイントです。一般化したパターンをうまく見つけられるか(今回の場合は「○の間に×が1つ挟まる」)が(2)のような問題では重要となりますが、これは似た問題を解いて慣れるしかないですね。尚、立式の方法が分からない(なぜ各パターンの確率は掛け算で、最後の集計は足し算になるのか、など)場合は、問題集を解くというより解説書や教科書を読み直すことをお薦めします。この手の本には集合の概念などが書いてあって読みづらいのですが、実はこの「集合」が確率の理解に非常に役立ちますので、是非読んでみてください。

2008年8月14日木曜日

数学力のステップアップ法ですが、自分の場合は「長時間考える」ということでした。良質の難問を30分~1時間、もしくはそれ以上考えた上で解答を見るようにします。その場合も、「考えてもよく分からないからもう見ちゃえ」という感じではなく、「思いつくこと全て試して何となく糸口が見える気がするけど、これ以上どうにもならん」というところまで考え抜いた上で見ることがポイントです。ここまで追い込んでから見ると、解答に対する理解度や、自分に不足していたところがよく分かるようになってきます。

この「良質の難問」ですが、各大学の入試問題集が非常に役立ちます。こう言う表現は失礼ですが、大学の入試問題の難易度は、偏差値にほぼ比例しているように感じました。そこ で、滑り止め(失礼!)大学から順に試しに入試問題を解いていき、現在の自分のレベルに最適な大学の問題をターゲットに据えて、順にステップアップを図る、という手は非常にいいと思います。

私が最終的にやりこんだのは「大学への数学」という雑誌に毎月4~6問載っている「学力コンテスト」でした。高々4問ですが、それを1ヶ月近く(つまり1問平均1週間)かけて解く、ということを約1年間続けたことでかなりステップアップしました。何より、超難問を解いた・取り組んだということが受験本番での自信につながったように思います。

勿論、本番の入試は解答時間が有限なので要注意(笑)。
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さて、続いて平成18年度(2)の問題についてです。
式をゴリゴリ解く可能性もありですが、なるべくなら図などで苦労かけずに解きたいもの。幸い、ベクトルの関係式(漸化式)が単純で、半径1の円上に点が乗るということで、図を描くのは簡単です。ちなみに、図は与えられた条件をなるべく全て表すように描くのが鉄則です。

で、描いてみたのが左側の図。描きながら気付くのが、PnはPn-1とPn+1のちょうど間に来る(角を2等分する)ことが分かります。これが1~3の3点であっても、2~4の3点であっても(恐らく)変わりません。従って、P1~P3について描いた図形とP2~P4について描いた図形が相似となる関係となり、P4はやはり半径1の円上に位置することになります。

正確な図を描き、PnがPn-1とPn+1の間に来ることに気付くことがこの問題の鍵です。このような図形問題は高校入試で散々やったかと思いますが、大学入試でも十分役立ちますね。忘れている方は、高校入試の参考書で図形に関する性質を一通り見直してみることをオススメします。

2008年8月6日水曜日

では、今度は平成18年度の同じく第一問の、とりあえず(1)を解くことにします。問題は東大のHPを参照して下さい。うーん、ざっと見た感じではよくあるベクトルの問題に見えますね。ベクトルの問題の場合、ベクトルの状態で四則演算して答えまで到達できれば簡単なんですが、どうしても駄目そうな場合には、x成分とy成分に分解し、カリカリ面倒くさい式を計算することになります。この問題はどうでしょう?
とりあえず、P1とP2とP3の関係式は問題文から以下のようになります。

これは問題文そのままなので問題ないですね。さて、「P1とP2が曲線xy=1上の点」という部分を数式で表現するにはどうしたらいいかというと・・・手っ取り早いのが、xとyの成分に分解して別々に計算する方法になります。という訳で、この問題は面倒くさい計算になりそうです。
P1の座標は、xy=1上の点であることから、例えば変数を用いて(, )と書けます。P2の座標も同様に、変数を用いて(, )などと書けます。で、P3の座標に関する条件は問題文からはよく分からないので、とりあえず(, )と置くことにします。で、これらをさっきの式に入れると、

という式になります。この式のx成分、y成分を別々に整理すると、得体の知れなかった(, )は、


と、で表せることになります。で、問題に戻ると、P3がxy=1上に無いことを示せ、となっています。要は、この(, )をxy=1に代入し、矛盾が出ればOKとなります。ガリガリと計算してみましょう。


と、合っているのかよく分からない式がでます。ま、とにかくこれは1じゃ無いから証明終わり。
・・・ではまだ済まされません。よーく考えてみると、この式に適当なの組を放り込んだ時に1になったら、P3はP1とP2の条件によってはxy=1上に存在することになっちゃいます。そこで、「のどんな数字の組み合わせでもこの式は1にはならない」ことを示さないといけません。で、どうやって示すかというと、とりあえずこの式=1 という式を立てます。

そしてこれを解くと1になるの組み合わせが求まります。よくあるパターンとしては、その答えが虚数になれば、「事実上P3がxy=1になるようなP1、P2の組み合わせは無い」と言い切って終わることができます。
ところが、ここで問題が一つ。この式、変数が二つあるんですよね。一般的には、式1つに変数2つだと解けません。第一問(1)の癖に難問です。 で、どうすればいいかですが、この「解けません」という表現にはちょっと語弊があって、「計算不可能」では無く、「解が無数に存在するので1つに特定できません」という表現が正しいです。よって、一つに特定するのではなく、の関係式で上式を満たすものを求め、その関係性が変(恐らく虚数を含む関係式)ということが示せればOKとなります。
具体的にどうするか、ですが、2変数の関係を1変数に置きなおして解き、改めての関係を示す、という方法になります。例えば、などと置き、について上式を解いてからの関係を示す、などです。このの取り方が問題ですが、幸い、今回のケースではとおけば、上式をだけで簡単に表せます。

両辺にを掛けて整理すると二次方程式が求まります。

で、これを解くと・・・とやっぱり虚数になります。従って、の関係が虚数になる=実数上にこの関係を満たす解が存在しないことになり、P3はxy=1上に存在しない、ということが言えます。

注:式の細かいところにはあまり注意を払っていないので、正確な式・答えは問題集などでご確認下さい。

今回は、問題文に従って式の変形をするところまでは簡単なのですが、出てきたよく分からない式をどう評価すればxy=1上に無いことが言えるのか、という部分が解けるかがポイントでした。1式2変数という方程式の扱い方などは、「解の存在条件を示せ」関連の問題を多数解くことで自然と身につく…かもしれません。